アトリエ探訪記-3

vent de moe
小林 萌さん

vent de moeという名前で、扇子屋とビジュアルデザインをおこなっている小林萌さんとの出会いは2022年、東京で開催する展示のイベントがきっかけでした。扇子に描かれた絵の軽やかで柔らかい色の重なりと、絵や文字のコラージュ、展示の方法やそれにまつわるビジュアルや言葉まで、トータルで作り上げられた世界がずっと心に残っていました。
その後、ハンカチのデザインの依頼をさせていただき、やり取りを重ねる中で、vent de moeの活動についてもっと知りたいと思うようになっていたところ、ハンカチの再販と一緒に物作りをするお話が。これはチャンス!ということで、今回は長野県松本市にある、自宅兼アトリエにお邪魔しまして、おしゃべりをしてきました。

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-松本市内が一望できて、とても穏やかな場所ですね。 ここには長く住まれているのですか?

もともと長野市の出身で、学生時代と社会人になってしばらくは東京に暮らしていました。結婚と出産を経て、もともと自分が育ったような環境の中で子育てができたらなと思うようになり、松本に家族で引っ越してきました。最初は市街地に住んでいたのですが、少し離れたこの里山地区に借りられる家を見つけて、引っ越してきました。街とは気温も空気もだいぶ違って、もう朝晩はだいぶ冷えます。

-そうなんですね。自然が近くに感じられてとても良いところですね。萌さんは東京にいる時から、絵やデザインの仕事をされていたのですか?

いいえ、東京にいた時にはアート関連の財団で企画やマネジメントの仕事をしていました。もともと絵を描くことや、美術館やギャラリーでアート作品に触れるのが好きで、学生時代は早稲田大学の繊維研究会という服飾サークルに所属したり、ブランドのお手伝いをしたりしていたこともあったのですが、美大や専門学校で勉強していたわけではなく、制作する側の仕事ではなかったんです。松本に来てからも、数年は企業で事務の仕事をしていました。

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-絵の仕事をされていたのかと思っていました、びっくりです。アーティストとして活動し始めたのは何かきっかけがあったのですか?

松本に来てから3年経ったころ、本当に自分のやりたいことを仕事にしていきたいと決心してvent de moeを立ち上げました。扇子のことを知る中で、日用品であり芸術品でもある、曖昧で色んな姿をもつ扇子という存在に魅力を感じて、自分の絵をプリントした生地で、扇子を作りたいなと思うようになりました。それで実際に職人さんのいる京都まで行って、作れる場所を探したんです。

-その気持ちから行動に移せるなんて、勇気がありますね!

はい、すごく勇気がいりました。最初は京都の独特の文化もあって、お話しするのも緊張したのですが、作りたい気持ちを伝えると意外と前向きに聞いてくださる方が多くて。2年ぐらい色々なやり取りをして形にすることができました。ここ5年は3人の職人さんとお仕事をさせていただいています。

-絵の仕事をされていたのかと思っていました、びっくりです。アーティストとして活動し始めたのは何かきっかけがあったのですか?

松本に来てから3年経ったころ、本当に自分のやりたいことを仕事にしていきたいと決心してvent de moeを立ち上げました。扇子のことを知る中で、日用品であり芸術品でもある、曖昧で色んな姿をもつ扇子という存在に魅力を感じて、自分の絵をプリントした生地で、扇子を作りたいなと思うようになりました。それで実際に職人さんのいる京都まで行って、作れる場所を探したんです。

-その気持ちから行動に移せるなんて、勇気がありますね!

はい、すごく勇気がいりました。最初は京都の独特の文化もあって、お話しするのも緊張したのですが、作りたい気持ちを伝えると意外と前向きに聞いてくださる方が多くて。2年ぐらい色々なやり取りをして形にすることができました。ここ5年は3人の職人さんとお仕事をさせていただいています。

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-無地の扇子に絵を描くのではなく、最初からプロダクトとして作り始めたんですね

そうですね。はじめから、できたものに自分の絵を描いて展示しようという気持ちはありませんでした。理由の一つには、自分が何者でもない、という気持ちがあって。イラストレーターとして肩書きがあるわけではなかったので、自分で絵を描いても自己満足というか・・・個人で完結するよりも、いろいろなプロフェッショナルな人と関わって一つのものを作り上げていきたいと思いがありました。
あとは私が絵を描く作業に没頭したいタイプではないという理由もあります。分業制でさまざまな行程で人が関わってやり取りをしながら、一つのものが出来上がっていく流れとか、できたものの販売方法、会場のコーディネートとか、そういうことをトータルで考えることに面白さを感じるんです。
一人では気づけない発想とか技術とか、誰かと関わることで新しいことにトライできるとか、緊張も失敗もするけど楽しいですよね。だからはじめからプロダクトを作りたいと思ってスタートしました。

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-なるほど、萌さんの肩書きがイラストレーターではなくてデザイナーなのは、そういう気持ちからなんですね

はい、でも肩書きは毎回迷うんです。手から生まれるものが好きなので、やはりスタート地点は絵を描くことがあるのですが、最初に扇子の展示をしてから5年経って、最近はお店のアートディレクションやデザインのお仕事が増えてきていて、予想外の広がりだなと思っています。

-スープのブランドを作られているのを拝見しました。

ありがとうございます。スープのブランドもその一つです。お弁当を販売するときの紙周りのアートワークを依頼してくださったことがきっかけで、そこからお話を深めるにつれてそのお店の方の抱えている社会課題や、自分が日々の食卓で感じている個人的な課題を融合させて、何ができるかなと考えて、スープのブランドを作ることになりました。
自分たちの生活を良くするものが作れたとても面白いお仕事で、これも相手がいるからこそ生まれたものだなと思っています。

-なるほど、萌さんの肩書きがイラストレーターではなくてデザイナーなのは、そういう気持ちからなんですね。

はい、でも肩書きは毎回迷うんです。手から生まれるものが好きなので、やはりスタート地点は絵を描くことがあるのですが、最初に扇子の展示をしてから5年経って、最近はお店のアートディレクションやデザインのお仕事が増えてきていて、予想外の広がりだなと思っています。

-スープのブランドを作られているのを拝見しました。

ありがとうございます。スープのブランドもその一つです。お弁当を販売するときの紙周りのアートワークを依頼してくださったことがきっかけで、そこからお話を深めるにつれてそのお店の方の抱えている社会課題や、自分が日々の食卓で感じている個人的な課題を融合させて、何ができるかなと考えて、スープのブランドを作ることになりました。
自分たちの生活を良くするものが作れたとても面白いお仕事で、これも相手がいるからこそ生まれたものだなと思っています。

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-今回一緒に作っているスウェットとロンTも「一緒にやりましょう」と萌さんが声をかけてくださって、一人とは違う面白さや緊張感を感じています(笑)


私も一人で絵をプリントして作ることもできるのですが、洋服と関わりの深い土屋さんと一緒にやれて、ボディーにする素材や、色などアイデアが広がりました。

-今回のプリントはどういうイメージで作られたのですか?

はじめに線が特徴的なものが描きたくて、花や植物のイメージが浮かんで一つ目は文字と花のコラージュのプリントができました。そのあとに、これからの季節の風景を考える中で、暖房の効いた温かい部屋で咲き乱れるチューリップのイメージが浮かんだんです。もともとデイビット・ホックニーの黒いチューリップの絵がとても好きで、そのオマージュというか自分もチューリップに挑戦してみたいなという気持ちもあって、チューリップを描きました。両方とも単色のプリントというのは最初に考えていたので、ブラックの方は鉛筆と水彩と質感の違う黒の組み合わせで描いています。

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-今販売しているハンカチもですが、スウェットの図案もコラージュして作っているんですね。

 そうですね。コラージュは自分がデザインをする上で大切にしている方法です。自分の絵は好きなんですけど、いつも上手くいかないなという気持ちで描いています。やりきったという気持ちにはなれなくて。それでいろいろな絵を描いて、出来上がった絵を切り刻むと、もう一度素材に戻るような感覚になれるんです。
それぞれがパーツになって、そこからもう一度スタートできるような感じ。過去の素材も寝かせてあって、時々見返します。何年か経つと自分の目も感覚も変わっていて、また新たに出会った!みたいな気持ちになれるのも楽しくて。

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-2柄とも大人が素敵に着れるようなシックなデザインで、私も早く着たいなと思っています。このプロダクトも108神楽坂店でのイベントを皮切りに、いろいろなお店で見ていただける予定で、それぞれの場所でどんな風に変化していくのかも楽しみですね。

 個人的に冬の暖かい部屋で、自由気ままに踊るチューリップの姿に勇気をもらっていました。気づけば冬のカメラロールはチューリップの写真ばかりで。そんな個人的な視点を出発に、見てくれた方が「なんか面白い取り組みだったな」とか「いい時間だったな」とか少しでも心に残るものが作っていけたらいいなと思っています。





tulip journey は、MKiMPのオンラインのみでなく全国のセレクトショップやギャラリーでお披露目の場を設けていただく予定です。詳しくは改めてお知らせいたします。
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